これまで世界で最も有名なワインをいくつも生み出してきたフランス東部、ブルゴーニュ地方。しかし、ドメーヌ・ルフレーヴほど、この地域とテロワールに密接につながっているワイナリーはないでしょう。1717年、ピュリニー・モンラッシェにて創業し、一家を通じて受け継がれ、20世紀はじめにジョセフ・ルフレーヴがドメーヌを設立。
ブリス・ド・ラ・モランディエール氏は現在、一族の4代目としてドメーヌ・ルフレーヴの経営とワイン造りを行っています。自然と調和するというドメーヌの伝統を守りつつ、同時に新しい技術を駆使し、ワイン一本一本が唯一無二の生きたアートとなるよう励んでいます。
新しいテクノロジーと古い技術の融合
ドメーヌ・ルフレーヴでは、昔ながらのワインの造り方と、実験的で挑戦的なアプローチは相反するものではありません。自然のリズムと新鋭のテクノロジーのどちらもがワイン造りに大切な役割を果たし、考え尽くされた「歴史」と「今時さ」のコンビネーションが、ワインをより特別なものにするのです。
「伝統の尊重は大事ですが、より大切なのは、なぜ、今の伝統の形であるのかを理解することです」と話すド・ラ・モランディエール氏。科学は便利だとする一方で、「新しいテクノロジーや科学は、ピュリニー・モンラッシェのテロワールを表現するのに本当に適しているのか、常に自問自答している」とも語ります。
「この新しいアイデアは、ワインに何かを足しているのか?複雑さなのか、美しさなのか…テロワールとワインの特徴をきちんと反映できているか?それが私たちが求めているものです」
ワインを適温で貯蔵するために発明された斬新な卵型のセラーは、ルフレーヴの絶え間ない革新への意欲の表れとも言えます。しかしこれは決して奇をてらったのでも、見た目の美しさのためでもなく、工夫を凝らしたアプローチのひとつに過ぎないそう。「卵型以外にも、容器を大きくしたり小さくしたり、素材をステンレスやコンクリート、木にしてみたり、さまざまな貯蔵方法を試してきました」
「いろいろと試行錯誤してみて最終的に分かるのは、一つの答えを導き出すよりも、アプローチのバリエーションを持つ方がより答えに近い、ということです」
自然が造り出すワイン
広大なブドウ畑の区画ひとつひとつが、丁寧でそれぞれに特化したケアをするに値するというのが、ドメーヌ・ルフレーヴの考え。気候の変化や土壌の気まぐれにより、それぞれの区画に個性があります。醸造者の手に負えないことも時にはありますが、それも全て、循環し、エネルギー溢れるプロセスの一部なのです。
だからこそ彼は、ワイン造りは単に完璧を求めるだけのものではないと考えています。「良いヴィンテージもあれば、普通のヴィンテージもある。その事実が好きです。それこそが母なる自然が与えてくれた美しさであり、それをワイン造りに映し出したいのです」
「ワインは毎年完璧であるとは限りません。ある意味、完璧はつまらないと思われることも。むしろ、ワイン造りのプロセス自体が芸術的表現なのです」
決して満足することなく、常に一歩先のことを考えているド・ラ・モランディエール氏。「もっと、もう少し、もうほんの少しだけできる、と自分に言い聞かせれば、それもまた芸術的な決意なのです」
この独特なワイン造りのプロセスは、ワインを初めて口にする真実の瞬間に、最高潮に達します。「収穫の年を終えてワインを味わうとき、魔法のような感覚が、心をときめかせる感動があるんです。『わぁ、すごい!』と言う瞬間が」
「実はワイン造りには大掛かりなことはありません。秘密もない。すでに本に書かれていることを私たちはやっています。でも、やり方やディテールへのこだわりといったところに、想いが映し出されるのです」
芸術同様、ルフレーヴのワインは人を結び、美しいものを共有させます。「私たちと、私たちのワインを味わう人々の間には大きなつながりがある」このつながりを強固なものにするため、最近ではYouTube動画にも力を入れているそうです。
家族の価値観を共有する
優れたワインを造ることは、どのブドウ畑にとっても目指すべきゴール。しかし、ド・ラ・モランディエール氏にとっては、結果がすべてではありません。テロワールのリズム、予期せぬ瞬間、そして、そのすべてにおいて中心の役割を果たす醸造者もまた、同じくらい重要な存在です。家族経営であるドメーヌ・ルフレーヴの中心は「人」なのです。
2017年にドメーヌ・ルフレーヴに参加した現レジスールであるピエール・ヴァンサン氏についても「なぜディテールが大事なのかを最終的に理解し、私たちの家族の価値観を共有できる人に囲まれていたい」と話します。
ルフレーヴのもう一つ重要な信条は、ワイン造りが地元の環境に与えるさまざまな影響に目を向けること。「ワインと地球のためになるバイオダイナミックに対して真の信念を持つ人が私たちには必要です」
自然はワイン造りのパートナー
ドメーヌ・ルフレーヴでは1997年からバイオダイナミック農法を取り入れています。バイオダイナミック農法とは、化学的なものを使わず自然と調和しながら、生態系に悪影響を与えずにワインを造ること。この農法によってブドウは、真に自身を表現することができるようになります。
多くのワインメーカーを悩ませる気候変動に関しては、ここ近年、サステナビリティに向けて大きくシフトチェンジを進めています。
現在、3つの建物を作っており、すべてカーボンニュートラルになる予定だそう。
「また、木を剪定するときに出る木材は燃やさず、代わりにリサイクル工場に送ります。大きなコストがかかりますが、正しいことだと思っています」
ドメーヌ・ルフレーヴの自然に対する深い敬意と、より洗練されたワインにするための芸術的なアプローチは、次の収穫がどんなものであっても、これまでの300年の歴史と同様、素晴らしく、驚きに満ちたものになることを確信させてくれるものでした。
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