シャトー・マルゴー。その名を聞けばワイン愛好家ならだれでも、フランス・ボルドーのプルミエ・クリュで知られる伝統あるドメーヌを思い浮かべるでしょう。16世紀初頭に設立されたこのドメーヌは、毎年素晴らしいワインを生み出し、フランスのワインづくりの伝統をとてもよく表しています。
副総支配人であり、CEOのコリーヌ・メンツェロプロスの娘であるアレクサンドラ・プティ=メンツェロプロスは、ドメーヌの近年の建築についても紹介しつつ、数世紀にわたる伝統の意味や、シャトー・マルゴーに恋した彼女自身のものがたりを話してくれました。
世紀をまたぐ伝統
アレクサンドラと兄弟は幼少期をパリで過ごしましたが、収穫の時期にはいつもワイン生産地であるメドックのドメーヌを訪れていました。「ドメーヌで過ごすことも、収穫も、大好きでした。当時は手伝っているつもりでしたが、思い出してみると、きっと何の手助けにもなっていませんでしたね」と笑いながら話します。
アレクサンドラがシャトーでのキャリアを歩み始めたのは、経営学の学位を取得し、さらにロンドンでファインアート・装飾美術の修士号を取得したあとでした。
シニア・マネジメントの座に就いたアレクサンドラは、シャトー・マルゴーの歴史あるワインづくりの伝統を守ると心に決めました。「マルゴーは私たちよりも大きな存在です。これから先もここにあり続け、世代から世代へと受け継がれていく。だからこそ、私たちはマルゴーのために動くのです。」
母親のコリーヌ・メンツェロプロスは、若くしてシャトーを引き継ぎ、40年間にわたってドメーヌの責任者として、世界におけるマルゴーの完璧な評判を支えるために力を尽くしてきました。
「母と、同じくシャトーで働く兄、そして私にとって、これは伝統を守ることを意味します。私たちはマルゴーのやり方を守りながら、これからもさらにワインの素晴らしさと質を向上させていきたいのです」。
生まれた時からずっとマルゴーの魔法を教わってきた
シャトー·マルゴーの建築
近年は、19世紀建設当初からの建物のデザインと、ワイナリーのモダンな空間を結びつける新しいプロジェクトが加わり、元のクラシカルなイメージをリニューアルしました。 その一部が、建築家のノーマン・フォスター氏が開発した新しいセラーです。
アレクサンドラによると、新しいセラーのおかげで、貯蔵室と醸造プロセス用のスペースが増えたそう。そして以前よりも発酵タンクのサイズのバリエーションが増えたことで、異なる区画のワインを醸造する時の精度が向上しました。
シャトー・マルゴーのセラーに映し出される壮大な建築の伝統は、アレクサンドラ本人が広告会社とコラボして作った、かの有名な2015年のヴィンテージのボトルのデザインにもインスピレーションを与えました。
このボトルはシャトーの建築200周年を記念してデザインされたものですが、ヴィンテージ自体が特別なものでなければ実現は不可能でした。シャトーの伝統において重要なのは、特別にデザインされたボトルには、傑出したワインだけを入れること。そして2015年は、希望を大きく超えた素晴らしいヴィンテージとなったそうです。
「シャトーを前面に出しつつ新しいセラーを見せる、というアイデアをベースに、シャトーのシルエットを金色で前面に出し、それを囲むように新しいセラーの輪郭を明るくやわらかい影で表現しています」。
このボトルのデザインはアレクサンドラにとってシャトー・マルゴーでの初めての大型プロジェクトであり、副総支配人に任命されたタイミングとも一致。そして最終的に、無事成功をおさめました。
持続可能な開発を優先
ここ数年、多くのワインメーカーと同じく、シャトー・マルゴーでもサステナビリティは最重要課題となっています。昨年には、専任のシニア・サステナビリティ・マネージャーとしてオーレリー・デュトルーを採用しました。
「オーレリーはあらゆるレベルでサステナビリティを向上してくれています。二酸化炭素の排出量削減はもちろん重要対策として行っていますが、それだけでなく、ごみの削減のためにもさまざまな方法に取り組んでいます」。具体的には、ごみの回収、分別、コンポストなどがその例だそうです。
さらに、フランスの国立森林局と共に、森林における生物多様性の回復や新しい木の植え付けに力を入れています。長距離移動では飛行機の使用を減らし船に切り替え、また、生産時の環境負荷を減らすために、電気やガスの使用量も変えました。
「一つひとつを見ると決して難しいことではないのですが、大きいことから小さいことまでたくさんあるので、毎日がチャレンジの繰り返しです」とアレクサンドラは話します。しかし彼女たちは、その努力は報われるとわかっています。
ロンドンの中心にあるシャトー·マルゴーのかけら
2017年、アレクサンドラはマルゴーのワインへの情熱をロンドンに持ち込み、ロンドンの中心地でフランス料理店「クラレット」をオープンしました。「若くしてマルゴーに入りましたが、ずっと自分のビジネスもやってみたいと思っていました。」と振り返ります。
「マルゴーはすでに存在していたんですよね。でも、何もないところから、ゼロから自分の会社を作るチャンスはみんなにあるのです。」
「クラレット」は、フランスワインのみでなく、世界中のワイン産地のオリジナルワインを含むクリエイティブなワインリストで人々を楽しませてくれます。でもやはり、マルゴーのワインが好きでレストランを訪れる人が多いそう。
また、お店ではお客様との距離が近くなるとのことで、アレクサンドラがお店に行くたびに、彼女に会いたがっているお客さんがいるほど。
「特にレストランでは、その場にいてお客さまにお会いし、フィードバックをいただくことがとても大切だと感じます」と、アレクサンドラは締めくくりました。
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