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「ジパング 平成を駆け抜けた現代アーティストたち」:小松美羽が魅せる精霊の世界

日本の現代アートシーンに新たな風を吹き込む「ジパング 平成を駆け抜けた現代アーティストたち」展が、佐賀県立美術館と広島市の「ひろしま美術館」で開催されています。佐賀県立美術館では2024年8月24日から10月20日まで、広島・ひろしま美術館では2024年11月2日から12月22日まで、それぞれ約2ヶ月にわたって展示が行われます。本展は、平成という時代に活躍した日本の現代アーティストたちの作品を通じて、自国での再発見に止まらず、日本という土壌に育まれた独自な才能と技術を携えた作家たちと共にこれを世界に示す貴重な機会となります。


小松美羽 悪を見るな ―山犬―

小松美羽 悪を見るな ―山犬―

 

展覧会には、小松美羽をはじめ、会田誠、池田学、石田徹也、岩崎貴宏、O JUN、塩田千春、奈良美智、宮永愛子、山口晃、宮島達男、村上隆など、約29名の著名アーティストが参加します。平成を代表する作品が一堂に会し、日本の現代アートの多様性と作品に込められた本質を体感できる内容となっています。本展の開催趣旨について、主催者は次のように述べています。「平成という時代は、経済的には『失われた30年』と評されることもありますが、文化的には日本の現代アートが世界的な評価を得た時代でもありました。本展を通じて、日本の現代アートの魅力を再発見し、世界に向けて発信していきたいと考えています」

 

中でも、長野県出身の現代アーティスト、小松美羽氏は、その独特な芸術表現で注目を集めています。1984年生まれの小松氏は、2004年に女子美術大学短期大学部を卒業後、銅版画やアクリル画、磁器への絵付け、さらにはライブペインティングまで、多岐にわたる制作スタイルで活躍しています。幼少期から目に見えない世界への強い感受性を持ち、自然豊かな環境で育った小松氏は、その経験を作品に反映させています。彼女の作品には、生き物たちとの触れ合いから得た感性が色濃く表れており、観る者を神秘的な世界へと誘います。

 

2023年には、東寺で行われた真言宗立教開宗1200年を記念する法要において、滞在制作で完成させたマンダラを奉納しました。この経験は、彼女の芸術的視野をさらに広げ、精神性の高い作品創作につながっています。また、小松氏の作品の特徴に独自の色彩とユーモラスな表情を持つキャラクターたちが挙げられます。例えば、《悪を見るな―山犬一》(令和4/ 2022年)は、3連作として制作された作品で、邪気を祓い神前を守護する存在である狛犬を、親しみやすい神獣として表現しています。さらに、被爆地である広島の平和を願って制作された《地球が涙を流した日 広島から広がる、平和への祈り》(令和4/ 2022年)は、被爆者との対話を重ねながら1年余りの歳月をかけて完成させました。この作品は、平和への強い思いと、生命の尊さを訴えかける力強いメッセージを持っています。

小松美羽氏は、自身の創作理念として"The Great Harmonization"(大調和)を提唱しています。これは、生きとし生けるものが魂においては平等で、あらゆる存在がその個性を保持しながら共存しうるという意味を込めた概念です。この理念は、彼女の新作「精霊たちの時間」「精霊たちの目覚め」(ともに2024年)にも力強く表現されています。これらは、当雑誌『Gen de Art Issue 16』の表紙と裏表紙を飾った作品でもあり、小松氏の最新の芸術表現を体現しています。


小松美羽 精霊たちの目覚め

小松美羽 精霊たちの目覚め

 

小松美羽 精霊たちの時間

小松美羽 精霊たちの時間


本展には、小松氏以外にも多くの著名アーティストの作品が展示されています。会田誠の《灰色の山》(2009-2011)は、社会や歴史、現代と近代以前、西洋と東洋の境界を自由に往来する会田氏の特徴的な作風を示しています。奈良美智の《Through the Break in the Rain》(2020)は、見つめ返すような瞳の人物像が印象的な奈良氏の代表作の一つです。池田学の《誕生》(2013-2016)は、圧倒的な細密さと独自の感性が融合した作品で、鑑賞者を驚かせます。

 

「ジパング 平成を駆け抜けた現代アーティストたち」展は、日本の現代アートの豊かさと深さを再確認する機会であると同時に、その未来への可能性を探る場でもあります。本展で紹介する平成を代表する実力ある作家たちは、世界の現代アートの文脈を捉えながら、日本の文化と結合し変容させた、独自の本質を獲得しています。時代の複雑さや多様性を反映した作品群は、来場者に強いインパクトを与えるだけでなく、日本の現代アートの魅力を再発見する絶好の機会となることは間違いありません。

 

ジパング 平成を駆け抜けた現代アーティストたち


佐賀会場

会期:2024年8月24日~10月20日

休館日:毎週月曜日(9月16日、9月23 日、10月14日は開館)

会場:佐賀県立美術館(2・3・4号展示室)

住所:佐賀県佐賀市城内1-15-23

開館時間:9:30~18:00(最終入場は17:30)

料金:一般 1200円 / 高校生以下、障害者手帳または指定難病医療受給者証の所持者とその介助者1名は無料

電話番号:0952-24-3947 

ウェブサイト:https://saga-museum.jp/museum/

 

広島会場

会期:2024年11月2日~12月22日

休館日:会期中無休

会場:広島・ひろしま美術館

住所:広島県広島市中区基町3-2

開館時間:9:00~17:00(最終入場は16:30)

電話番号:082-223-2530 

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