「Tokyo Contemporary Art Award(TCAA)」は、中堅アーティストを対象に、海外での展開も含め更なる飛躍を促す ことを目的に、2018 年度から実施している現代美術の賞です。5 回目となる TCAA 2024-2026 では、選考委員にレズリー・マ氏(メトロポリタン美術館 アソシエイト・キュレーター) が加わり、計 6 名の選考委員によるスタジオ訪問や面談を経て、2 名の受賞者、梅田哲也と呉夏枝を選出しました。2 月 17 日(土)には授賞式および受賞記念シンポジウムを開催します。
TCAA は、2018 年に東京都と公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館 トーキョーアーツアンドスペース によって創設された、海外での展開も含め、更なる飛躍とポテンシャルが期待できる国内の中堅アーティストを対象 とした新たな現代美術の賞です。アーティストのキャリアにとって最適な時期に最善の支援内容を提供する必要性を 重視し、受賞者の選考は、選考委員によるアーティストのリサーチやスタジオ訪問により、制作の背景や作品表現、キャ リアステージへの理解を深めた上で行われます。 受賞者に対して
は、海外での活動支援のほか、東京都現代美術館での展覧会およびモノグラフ(日英)の作成など、 複数年に渡る継続的な支援を行っています。
受賞理由
◼️梅田哲也
発表する場所の地政学的、環境的特徴に対する洞察が、自身の表現言語で翻訳され、作品として昇華されている点が 高く評価されました。歴史やシステムといった重いテーマを扱いつつ、人間の感覚への信頼にもとづいた表現は詩的 で軽やかで、空間の物理的な制約をポジティヴに解釈、転用する手腕にも優れています。鑑賞者の体験を重視する作 品からは、作家の倫理的な態度を見ることができ、鑑賞者が自発的に場の探索を始められる丁寧かつ親密な仕掛けが 特徴的です。視覚文化に対する明確な理解にもとづいた分野を超えたストーリーテリングによってそれらを統合する 表現力は突出したものとして評価されました。
◼️呉 夏枝
大きな歴史およびそこで掬いきれない個人の小さな物語の両方への等しい眼差しが特徴で、染、織といったテキスタ イルの形をとる制作それ自体も地政学、女性史、移民・移住の歴史を表象するものとなっています。物質文化として のテキスタイルの技法と素材を丹念に研究し、かつ高い技術を備え、それらを表現する題材をコンセプチュアルに用 いている点が高く評価されました。また、現在作家が制作している作品群は、個人の生に焦点を当てるのみならず、 階級と労働に関する調査を交差させたアプローチであり、歴史だけでなく、ジェンダーや移民、自然環境の問題とも 接続可能である潜在性が評価されました。
選考委員長による総評
写真や映像といったデジタル・メディアを用いる作家が多かったですが、メディウムの選択や使い方、展示方法には新 鮮さや驚きを感じるようなものは残念ながら少なかったです。 自身の国籍や属性、ジェンダー・アイデンティティが制作当初の動機でありながら、そこから他の個人や集団の歴史、 経験へと接続していこうとする意思が強く反映された作品が多く、作家が制作の過程で関わる人々と時間をかけて丁寧 に信頼関係を築いていることに感心しました。 マイノリティや移民の問題は、彼らが存在する場所の歴史や地政学に根付く問題ですが、その一方で、世界のあらゆる ところにある問題であるとも言えます。マイノリティの問題を日本固有の問題として設定せずに語る方法を探ることで、 大局的な問題が顕在化し、より多くの人々と作品を通して問題を共有する可能性が開かれるのではないでしょうか。
高橋瑞木[CHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)館長兼チーフキュレーター]
Tokyo Contemporary Art Award 2024-2026
開催日
2024 年 2 月 17 日(土)
時 間
[授賞式]14:00-14:30(開場:13:30)
[受賞記念シンポジウム]14:40-16:10
会 場
東京都現代美術館 地下 2 階講堂(江東区三好 4-1-1)
※入場無料・要事前申込・先着順。日英同時通訳あり。
申し込み方法
TCAA ウェブサイトより、1 月 25 日(木)から 2 月 15 日(木)までにお申込みください。
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