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安藤忠雄: 人々に愛され、街に息づく建築

大阪生まれの建築家、安藤忠雄さん。独学で建築を学び、安藤忠雄建築研究所を1969年に設立。1979年建築学会賞を受賞した「住吉の長屋」や「光の教会」、直島の「地中美術館」最近では、パリの「ブルス・ドゥ・コメルス」などが代表作として知られています。多数の受賞歴や教授としての活躍も知られる安藤忠雄さんに、その「挑戦力」や未来への想いを訊きました。


Architect Tadao Ando Gen de Art

建築家、安藤忠雄さん


安藤さんの建築には、人を惹きつける美しさがありますが、安藤さんにとっての「美」、そしてその感性を形成した出会いについて教えてください。


実際の仕事の現場では、そんなに高尚なことをあれこれ考える間もなく、前へ前へと無我夢中で進んでいるわけですが「美」とひと言でいっても、見た目の美しさ、面白さが全てではないですよね。大切なのは、むしろ目に見えない部分「空間が人の心に語りかける力」の有無みたいなところにあるんじゃないかと思っています。


感性というか「表現」に対する姿勢ということなら、やはり20代の時に出会った具体美術協会ですね。「人の真似をするな、既成概念から自由であれ」という彼らの思想には多大な影響を受けています。「美」というよりも「創造とは何か」という原点の部分を彼らの背中に学びました。


今挑戦しているプロジェクトと、挑戦し続けながら”今”を生きる秘訣を教えてください。


2020年7月大阪・中之島からスタートした「こども本の森」プロジェクトです。2021年の7月には岩手県・遠野市でもオープン、今年の7月には兵庫県・神戸市で三つ目がオープンします。一貫するコンセプトは、こどもが自由に本と出会い、楽しめる場所にすること。こどもが主役の施設です。

先日、大阪の「本の森」を訪れると、施設内外をこどもが笑顔で元気よく駆け回っていました。完成後の建物が、人々に愛され、いきいきと街に息づいている情景を目にしたときが「つくってよかった」と一番嬉しくなるときです。


このプロジェクトは自身を育ててくれた社会への、自分なりの恩返しとして始めたものでした。どこまでいけるか分かりませんが、建築の仕事を続ける限りは続けていきたいですね。

こうして挑戦し続けられるのは結局、自分で決めた目標に向かって、自分で道筋をたて、自分の足で奔っているからだと思います。自分の選択、自分の責任ならば、その過程で苦労があっても乗り越えられる。世間のレールから外れていくわけですから、いつでもフル回転で気を抜けない。大切なのはこの「緊張感の持続」なんじゃないかな。そのためには、心と体、両方の体力が必要です。それを養うべく、私も運動と読書を一日も欠かさず続けています。


Tadao Ando - Architecture that Breathes and Grows on the City- Children's Book Forest

子ども本の森 中之島

大阪府大阪市, 2019

Photo/小川重雄


安藤さんが、建築家として未来に一番残したいものは何でしょうか。


私は日本に生まれ育った日本人ですから、やはり、日本固有の自然に依る文化、感性は残っていってほしいと思いますね。日本の未来のためだけではなく、世界の明日を考えるうえでも、日本人の自然観の継承は意味のあることだと思いますよ。結局人間もまた、自然の一部なわけですから。

未来の建築家像ということで言うと、今は激動する時代の中で、世界も建築も全く未来が見えない状態ですよね。だからこそ「建築とは何か、何のためにつくるのか」という建築の原点をしっかり考えている作り手が必要だと思っています。


Gen de Artの読者へメッセージをお願いします。


青春とは若さの特権ではなく、70代、80代でも目標を持って未来を向いていれば、その時間は青春である。アメリカの詩人サムエル・ウルマンはこう「青春」を詠いました。私は100才まで「青春」を生き抜くつもりです。いつまでも未熟なまま、熟しきらない「青リンゴ」の精神です。「Gen de Art」とは、こんな言葉に共感してくれる方々が手に取られる雑誌ですよね?皆さんもそれぞれの思う人生を、思い切り生きてください!皆さん一人ひとりの人生の輝きが、明日の世界の希望の光です!


Tadao Ando - Architecture that Breathes and Grows on the City - Bourse de Commerce

Bourse de Commerce

Paris, France, 2021

Courtesy Bourse de Commerce – Pinault Collection.

© Tadao Ando Architect & Associates,

NeM / Niney et Marca Architectes,

Agence Pierre-Antoine Gatier.

Photo/Philippe Guignard Air Images



 

From Gen de Art Issue 11

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