いまや伝説のデザイナーとも言える倉俣史朗。発表当時、センセーショナルな話題となった飲食店や服飾店の店舗デザインを手がけ、また独創的な家具を発表しました。しかし、1991年、そのキャリアの絶頂のなかで56歳という若さでこの世を去りました。そのためか、倉俣の業績を検証する展覧会は数多くありません。そして生前から、日本よりもヨーロッパでの評価が高いデザイナーでした。没後30年を超えて、今新たに、倉俣史朗の人と作品を検証し、その詩情あふれるデザインを読み直します。
倉俣史朗《ミス・ブランチ》1988年
富山県美術館蔵 撮影:柳原良平 © Kuramata Design Office
倉俣史朗(1934-1991、1978年以降は世田谷区在住)は、1960年代以降のデザイン界において、世界的に高い評価を受けたデザイナーです。富山県美術館所蔵の椅子《ミス・ブランチ》(1988年)に代表されるように、アクリル、ガラス、建材用のアルミなど、従来の家具やインテリアデザインの世界では用いられなかった工業素材に独自の詩情を乗せた仕事は、特に1970年代以降、世界的な注目を集めました。
1991年の没後もなお、比類ないデザイナーとして揺るがない評価を保っている倉俣ですが、国内美術館での紹介は多くありません。没後5年に原美術館から始まり、世界巡回をした回顧展(1996年)の後は、21_21デザインサイトでのエットレ・ソットサスとの二人展(2011年)がありました。しかし、埼玉県立近代美術館(2013年)以降、大きな展覧会は開かれていません。
本展では、作家の内面やその思考の背景による「倉俣史朗自身」を一つの軸としつつ、その「倉俣史朗自身」と紐づけながら初期から晩年までの作品を紹介することを試みます。2021年に没後30年を経たことも一つの契機として、同時代を生きた世代だけではなく、若い世代にも倉俣史朗という人と仕事を伝える機会となります。
倉俣史朗《ハウ・ハイ・ザ・ムーン》1986年
富山県美術館蔵 撮影:柳原良平 © Kuramata Design Office
海外では絶大な人気を誇っており、香港に美術館M+が誕生した際には、そこに倉俣史朗がインテリアデザインを手掛けた新橋の寿司店「きよ友」がまるごと移設されたことでニュースになりました。海外の家具メーカーでは倉俣史朗の家具が復刻・販売されるなど、現在も熱い支持を得ている倉俣。今展覧会は、造花の薔薇をアクリルに閉じ込めた《ミス・ブランチ》だけではない、倉俣史朗のデザインに対する世界的評価を再確認する機会でもあるのです。
デザインの先駆性が今でも高く評価される倉俣史朗ですが、今展覧会では、独立前に三愛で手がけていた仕事から、断片的に書き留められたままのスケッチや夢日記を紹介することで、その創作の源泉と秘密に迫ります。
倉俣史朗 スケッチブック「言葉 夢 記憶」より 1980年代
クラマタデザイン事務所蔵 © Kuramata Design Office
開催概要
会期
2023年11月18日(土)〜2024年1月28日(日)
会場
世田谷美術館
(東京都世田谷区砧公園1-2)
時間
10:00〜18:00(最終入場時間 17:30)休館日毎週月曜日および年末年始(2023年12月29日(金)~2024年1月3日(水))
休館日
月曜日、年末年始(2023年12月29日(金)~2024年1月3日(水))
*ただし、2024年1月8日(月・祝)は開館。1月9日(火)は休館
観覧料
一般:1,200(1,000)円
65歳以上:1,000(800)円
大高生:800(600)円
中小生:500(300)円
ウェブサイト
https://www.setagayaartmuseum.or.jp
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