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Gen de Art

点描画から空間表現まで: アーティスト今西真也の創作世界

我々の目には見えない世界が存在します。アーティストの今西真也氏は、その「見えない部分」を通じて人々に新たな視野を提供します。彼が織りなす色彩豊かなキャンバスは、 私たちの想像力を刺激し、語りかけてきます。彼のアーティストとしての旅は、中学生時代に美大への進学を決めたことから始まりました。

「子供の頃から絵を描くことが好きで、 描いたり何かを作ることを続けていきたいという思いで中学生の時に美大へ進むことを決めました。その後、現実やアートの世界を知り、大学院に入る頃、アートの世界で生きていくことを再決心しました」

今西真也氏 Artist Shinya Imanishi
今西真也氏 Photo/ Hanako Kimura

「物の存在感」を表現することの重要性

今西氏の作品からは、見える部分と見えない部分の間のテーマを感じることが できます。「いろいろと制作していく中で、物の立体感や存在感を表現したいという思いが生まれたんです。そこから視覚と認識のずれなどに興味が移っていきました」と語ります。そのテーマに興味を持つようになったきっかけは、彼の幼少期の体験にありました。「奈良の春日大社でのボーイスカウトの経験を思い出しました。街灯の光もない、夜の境内で感じた暗闇に安心を感じたんです。見えないなかに存在するリアリティに魅力を感じ、今に至るまでその当時の記憶をしっかりと覚えています。この経験から、見えないものを絵画を通して可視化したら面白いのではないか、と考えてこのテーマの制作を始めました」



「見える」と「見えない」の間で揺れ動く個人のインスピレーション

作品に使われるモチーフやデザイン、インスピレーションは、彼の見えるものと見えない ものを可視化したいという思いから生まれます。具体的には、雲や花火や稲妻、蝋燭などのイメージがあるものや光や空間といった概念をモチーフに制作しています。


「世の中には定義づけられたものがありません。そうした不確定な部分にリアリティと魅力を感じ、作品に反映し始めました」 と、今西氏は語ります。


特に「moonlight」シリーズでは、キャンバスに厚く絵具を重ね、そこに筆で点を打つように抉りながら描きます。そうすることで、点の集合体を離れた位置から見た時に、何かのイメージが見えたり見えなかったりする演出を施しています。作品から遠ざかることで次第に表れるイメージは、ものの変化や消失、退廃、再生、蘇生、復興を同時に想起させるモチー フを選んでおり、死(おわり)と生(はじまり) が表裏一体の関係であることを示しています。 素材とイメージ、視点と距離との関係性を探りながら、私たちが共通認識している事柄のあいまいさや不確かさを提示しようとしています。


彼の作品のもう一つの特徴として、視覚以外の感覚を表現する試みがあります。「東京現代で展示していた「Holiday cracker」シリーズの作品も、クラッカーとして見るとハッピーな記憶や人それぞれに過去の記憶が蘇ってくると思うのですが、 そうした記憶は人と共有できません。その記憶を話して共有できたら面白いし、そこに成立する空間に魅力を感じます」と、今西氏は語ります。 彼のインスピレーションの源は、自身の経験や、特撮映画、仏教哲学、東洋哲学など様々な分野から構成されています。「僕自身、アーティスト個人を作品に見て取れる作品に魅力を感じます。僕の作品を見て、今西真也だとパッと見て分かるようになっていると思うのですが、個人が成立しているからこそ、そのように認識できると思うんです」と述べます。このように、今西氏の作品には独特のスタイルと、独自の哲学が反映されています。


制作過程で生まれる 「Glimmering」

代表的な作品「Glimmering」シリーズは空間をモチーフにした作品で、今西氏はこの1年間力を入れて制作してきました。絵画にとって空間とは非常に重要な要素で、二次元の板の上に疑似的に3次元を描くことから進歩してゆき、絵画空間という独自の空間を持つこともあります。彼は制作過程について、「空間をグラデーションで表現し、筆と自作の板のようなもので掘るように点を打ちます。点の形は単なる四角ではなく、放射線透視図法などいろいろな空間を作る形をモチーフにしていて、線と線が繋がって空間ができたりできなかったりします。それを人間が見ると、明滅しているように見えるのではないかと考えて制作しています。乾いていない絵の具を掘り起こす際に、中の絵の具をひっくり返すようになるのですが、それを一つの空間からの余波として制作しているシリーズです。また近年、日常で視界の中に画像や動画が2、3個あり、それが素早く入れ替わることが多々あります。このような中で日常を送ることは20年前にはなかったことだと思います。このシリーズでは正に、その空間認識を絵画に起こそうとしています」と語ります。


絵の具との格闘、制作過程の醍醐味

今西氏は事前に下絵を描きますが、その方向性はしばしば制作過程で定められます。

「実際に制作に取り掛かる際は、絵具をのせた画面を乾く前に壁にかけ、その上にプロジェクターで補助線を投影して一発で制作します。時折、制作をしながら予定を変更することもあります。また思うように絵具の色が出てこない時もあるので、そういった時は絵の具と格闘しながら作品を作り上げます。こうしたトラブルは絵画制作における醍醐味ですね」


未来への視野

次のプロジェクトは、8月25日から六本木の日動コンテンポラリーアートで開催されるグループ展です。今西氏が初めてキュレーションを務める展覧会であり、「僕が初めてキュレーションを務めるので緊張しています」と、今西氏は未知の挑戦に期待を寄せています。 また夢として、「いつかはテート美術館で個展を開くのが夢です」と語ります。今後も今西氏の作品は、見えるものと見えないものの間で揺れ動く視覚と感覚を探求し続け、視覚芸術の新たな可能性を追求するでしょう。


 

GLIMMERING




 

開催概要

[展覧会名] カンサイボイスvol.2

[会期] 2023年8月25日(金) - 9月22日 (金)

[出展作家] 井上亜美 井上七海 今西真也 川村摩那 米村優人 

[会場] nca I nichido contemporary art(東京都港区六本木7-21-24 102)

[協力] KOTARO NUKAGA キュレーション 今西真也




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