ブルックリンを拠点に活躍する画家 エリザベス・グラスナー氏の個展「Head Games」が、ペロタン東京で開催中です。本展では、グラスナー氏独特の油彩技法によって生み出された小型絵画15点と大型絵画2点が展示されており、アーティストの美意識の深さと広がりを感じ取ることができる展覧会となっています。
Elizabeth Glaessner, Sphinx with arms, 2024, Oil on linen, 137.2 x 241.3 cm | 54 x 95 inch
Photo: Guillaume Ziccarelli, Courtesy of the artist and Perrotin
カリフォルニア州パロアルトに生まれ、テキサス州ヒューストンで育ったグラスナー氏は、2007年にニューヨークに移住。2019年から2020年にかけてのガルベストン・アーティスト・レジデンスでの滞在が、彼女の作品に大きな影響を与えました。この期間中、グラスナー氏は自身の作品への理解を深めるため、アイデアを具現化し実験することに集中しました。
グラスナー氏の制作プロセスは、油絵具をキャンバスに垂らすことから始まります。そして、工業用ブラシ、ハンドル、スクイージーなどの道具を使用して、絵具を押し、広げ、重ね、形成し、拭き取るなどの手法を用いて、神秘的で幽玄な人物像を描き出していきます。これらの豊満で脚の長い、多くの場合ヌードの人物像は、絵具を慎重に層状に重ねることで生み出され、直感的な質感と豪華で凹凸のある表面が創り出されます。一部の作品では、油絵具に小さなガラスビーズを混ぜ込むなど、独自の技法も見られます。展示作品には、ピクトリアリズム、プロセス、パフォーマンスといった要素が凝縮されており、グラスナー氏の卓越した油彩技術が光ります。同時に、私たちの自己認識や他者認識が想像と現実の相互作用によって形成されることを示唆しています。
Elizabeth Glaessner, Mimesis, 2023, Oil on linen, 40.6 x 30.5 cm | 16 x 12 inch
Photo: Guillaume Ziccarelli, Courtesy of the artist and Perrotin
Elizabeth Glaessner, Grass Play, 2024, Oil on linen, 40.6 x 30.5 cm | 16 x 12 inch
Photo: Guillaume Ziccarelli, Courtesy of the artist and Perrotin
グラスナー氏の作品には、西洋文学やギリシャ神話に基づく物語など、長年探求してきたテーマが継続して表現されています。例えば、エジプト神話の天空の女神「ヌト」がアーチ型の体で暗示されることが多いです。また、「Mimesis」という作品では、ギリシャ神話の「ピュグマリオーン」と「ガラテア」を観察する第三の人物が登場し、遠近法を歪めることで物語に新たな解釈を加えています。展示されている小型絵画は、グラスナー氏の制作プロセスを間近で観察できる貴重な機会であり、大型絵画と比べて身体性の要素は少ないものの、これらの小さな作品もまた動作的かつ物質的な特徴を持っています。また、これらの作品は、グラスナー氏がより大きな絵画へと変容させる前に、ポーズや人物、フォルムを実験的に探求するための手段でもあります。
「Head Games」展は、グラスナー氏の創造的なヴィジョンを追体験できる場となっています。神話や文学からインスピレーションを得た独特の人物像や、緻密な油彩技法によって生み出される幻想的な世界観は、見る者を魅了するでしょう。
Head Games
会期:7月2日ー8月31日
開廊時間:火曜日ー土曜日、11:00-19:00
会場:ペロタン東京
(東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル1F)
ウェブサイト:https://www.perrotin.com
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