新国立劇場バレエ団が2024/2025シーズンの幕開けを飾る『眠れる森の美女』の主役キャストが決定し、バレエファンの間で大きな話題を呼んでいます。今回の公演では、国際的に活躍する日本人ダンサー、佐々晴香氏のゲスト出演と、新国立劇場バレエ団の実力派ダンサー 池田理沙子氏の出演が決定し、夢の共演が実現しました。
『眠れる森の美女』リハーサル風景
Admil Kuyler
『眠れる森の美女』:永遠の名作
『眠れる森の美女』は、チャイコフスキーの美しい音楽とマリウス・プティパの振付によって1890年に初演された、クラシックバレエの傑作です。王女オーロラが悪い妖精の呪いによって100年の眠りにつき、王子の愛の力で目覚めるというおとぎ話を、華麗な舞踊で表現した作品です。技術的にも芸術的にも非常に高度な要求をダンサーに課すこの作品は、多くのバレエダンサーにとって夢の舞台とされています。特にオーロラ姫役は、バレリーナの技量と表現力を最大限に引き出す役柄として知られています。
第1幕の「ローズ・アダージョ」では、片足で立ったまま、両手を離して完璧なバランスを保つ「アティチュード」というポーズを、4人の王子それぞれと繰り返す難しい場面があります。これは、オーロラ姫の若さと優雅さを表現すると同時に、バレリーナの技術の極みを見せる場面として有名です。また、第3幕の結婚式のグラン・パ・ド・ドゥでは、オーロラ姫の成熟と幸福を表現しながら、高度な技術を要する踊りを披露しなければなりません。
このように、オーロラ姫役は3時間近い公演の中で、様々な感情と成長を表現しつつ、卓越した技術を見せ続けなければならない、まさにバレリーナの力量が問われる役柄なのです。
注目の主演を飾る佐々晴香
佐々晴香氏 Tobias Rege11
10月25日と29日の公演では、佐々晴香氏がオーロラ姫を演じます。ベルリン国立バレエのプリンシパル(主席ダンサー)である佐々氏は、国際的に活躍する日本人バレリーナの一人です。佐々氏は5歳でバレエを始め、その才能を早くから発揮しました。2012年にヒューストンバレエのベン・スティーブンソン・アカデミーに留学したことを皮切りに、東京シティバレエ団、ドルトムント・バレエ、スウェーデン王立バレエ、ノルウェー国立バレエと、世界各地の一流バレエ団で経験を積んできました。そして2023年、ついにベルリン国立バレエという世界最高峰のバレエ団に移籍。さらに2024/2025シーズンからはプリンシパルに昇格することが決定しており、まさに世界のトップダンサーの仲間入りを果たしています。
佐々氏の魅力は、卓越した技術と豊かな表現力の調和にあります。マカロワ版『ジゼル』やヌレエフ版『白鳥の湖』など、クラシックバレエの名作で主演を務める一方で、ウィリアム・フォーサイスやイリ・キリアンなど現代の振付家の作品でも高い評価を得ています。今回の『眠れる森の美女』でも、佐々氏の優雅さと技術の融合が、オーロラ姫という役柄にどのように生かされるのか、大いに期待が高まります。
日本を代表するダンサー池田理沙子
池田理沙子氏
11月3日の公演では、新国立劇場バレエ団のファースト・ソリストである池田理沙子氏がオーロラ姫を演じます。東京都出身の池田氏は、若くしてその才能を認められ、2009年にはユース・アメリカ・グランプリ女性シニアの部で銅メダルを獲得するなど、コンクールでの受賞歴も豊富です。2016年に新国立劇場バレエ団に入団してからは、急速にキャリアを積み重ね、わずか3年後の2019年にはファースト・ソリストに昇格。『くるみ割り人形』『ジゼル』などのクラシック作品から、森山開次振付の『竜宮 りゅうぐう』のような現代的な作品まで、幅広いレパートリーで主役を務め、観客を魅了し続けています。
池田氏の魅力は、繊細かつ大胆な表現力にあります。クラシックバレエの優雅さを備えながら、現代的な解釈も加えた彼女の演技は、多くの観客の心を掴んでいます。
新国立劇場バレエ団の挑戦
新国立劇場バレエ団は、1997年の設立以来、日本のバレエ界をリードする存在として成長を続けてきました。クラシックバレエの名作上演はもちろん、現代的な作品や日本独自の創作バレエにも積極的に取り組み、国際的にも高い評価を得ています。今回の『眠れる森の美女』公演では、世界で活躍する佐々晴香氏をゲストに迎えることで、さらなる高みを目指す新国立劇場バレエ団の意気込みが感じられます。同時に、池田理沙子氏という国内で育った才能にも主役の機会を与えることで、日本のバレエ界の未来を育てる姿勢も示しています。
クラシックバレエの名作である本作品を通じて、日本のバレエ界の現在と未来を垣間見ることができるでしょう。バレエファンはもちろん、芸術に興味のある方、そして感動的な体験を求めている全ての方々に、ぜひこの機会に劇場へ足を運んでみてはいかがでしょうか。
新国立劇場バレエ団
Comments