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六本木ヒルズの巨大蜘蛛で知られるルイーズ・ブルジョワの大規模個展が森美術館で本日開幕

20世紀を代表する最も重要なアーティストの一人、ルイーズ・ブルジョワの大規模個展が森美術館で本日よRI開幕しました。六本木ヒルズの象徴的な巨大蜘蛛彫刻「ママン」の作者として知られるブルジョワの作品群を一堂に会する本展は、「ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」と題され、2025年1月19日まで開催されます。


ルイーズ・ブルジョワ 《ママン》 1999/2002 年 ブロンズ、ステンレス、大理石 9.27× 8.91 ×10.23 m 所蔵:森ビル株式会社(東京) Louise Bourgeois

ルイーズ・ブルジョワ《ママン》、1999/2002 年、ブロンズ、ステンレス、大理石、9.27× 8.91 ×10.23 m、所蔵:森ビル株式会社(東京)


1911年にパリで生まれ、2010年にニューヨークで没したブルジョワは、70年にわたるキャリアの中で、インスタレーション、彫刻、ドローイング、絵画など、さまざまなメディアを用いて創作活動を行いました。彼女の作品は、男性と女性、受動と能動、具象と抽象、意識と無意識といった二項対立に潜む緊張関係を探求し、これらの概念を比類なき造形力によって共存させています。


ブルジョワの芸術の源泉は、主に幼少期の複雑でトラウマ的な体験にあります。彼女は記憶や感情を呼び起こすことで、希望と恐怖、不安と安らぎ、罪悪感と償い、緊張と解放といった相反する感情や心理状態を表現しました。また、セクシュアリティやジェンダー、身体をモチーフにした作品は、フェミニズムの文脈でも高く評価されています。


本展は日本では27年ぶり、また国内最大規模の個展となります。100点を超える作品群を3章構成で紹介し、ブルジョワの活動の全貌に迫ります。副題の「地獄から帰ってきたところ言っとくけど、素晴らしかったわ」は、晩年の作品からの引用で、ブルジョワの感情のゆらぎや両義性、そしてブラックユーモアのセンスを感じさせます。


ルイーズ・ブルジョワ 《無題(地獄から帰ってきたところ)》 1996年 刺繍、ハンカチ 49.5×45.7 cm 撮影:Christopher Burke © The Easton Foundation/Licensed by JASPAR, Tokyo, and VAGA at Artists Rights Society (ARS), New York

ルイーズ・ブルジョワ《無題(地獄から帰ってきたところ)》、1996年、刺繍、ハンカチ、49.5×45.7 cm、撮影:Christopher Burke

© The Easton Foundation/Licensed by JASPAR, Tokyo, and VAGA at Artists Rights Society (ARS), New York


展示構成は、ブルジョワの創造の源であった家族との関係をもとにした3つの章から成り立っています。第1章「私を見捨てないで」では母との関係、第2章「地獄から帰ってきたところ」では父との確執、第3章「青空の修復」では、壊れた人間関係の修復と心の解放がテーマとなっています。さらに、各章をつなぐ2つのコラムでは、初期の重要作品を年代順に紹介しています。これにより、ブルジョワの芸術的発展の過程を追うことができます。


本展の特徴として、作品の半数以上が日本初公開となることが挙げられます。特に、1998年以降に制作された晩年の作品が多く含まれており、布を用いた作品など、約8割が日本初公開となります。また、近年世界的に高い関心を集めている初期絵画作品も、アジア初公開を含む10点以上がまとまって展示されます。

さらに、六本木ヒルズを象徴するパブリック・アート《ママン》をはじめ、蜘蛛をモチーフとした作品群も注目です。ブルジョワにとって蜘蛛は、勤勉な実母の象徴であると同時に、母性の複雑さを表現するモチーフでもありました。


展示室の壁面には、ブルジョワ自身の言葉が掲出されます。才能ある文筆家でもあった彼女の言葉は、複雑な感情や心理状態を掘り下げており、作品理解の助けにもなります。また、コンセプチュアル・アーティストのジェニー・ホルツァーによる、ブルジョワの言葉を用いた新作も展示されます。さらに、ニューヨークのアンダーグラウンド・シーンで活躍したスーザン・クーパーが出演した、ブルジョワ企画のパフォーマンス記録映像も見ることができます。



1. ルイーズ・ブルジョワ《ヒステリーのアーチ》、1993 年、ブロンズ、磨かれたパティナ、83.8×101.6×58.4 cm、撮影:Christopher Burke © The Easton Foundation/Licensed by JASPAR, Tokyo, and VAGA at Artists Rights Society (ARS), New York

2. ルイーズ・ブルジョワ《シュレッダー》、1983 年、木、金属、塗料、石膏、244.2×218.4×289.6 cm、撮影:François Fernandez

  © The Easton Foundation/Licensed by JASPAR, Tokyo, and VAGA at Artists Rights Society (ARS), New York

3. ルイーズ・ブルジョワ《かまえる蜘蛛》2003年、ブロンズ、茶色く磨かれたパティナ、ステンレス銅270.5×835.7×627.4 cm、撮影: Ron Amstutz © The Easton Foundation/Licensed by JASPAR, Tokyo, and VAGA at Artists Rights Society (ARS), New York

4. ルイーズ・ブルジョワ《良い母》(部分)、2003 年、布、糸、ステンレス鋼、彫刻とスタンド:109.2×45.7×38.1 cm、撮影:Christopher Burke © The Easton Foundation/Licensed by JASPAR, Tokyo, and VAGA at Artists Rights Society (ARS), New York

5. ルイーズ・ブルジョワ《父の破壊》、1974 年、アーカイバル・ポリウレタン樹脂、木、布、照明、237.8×362.3×248.6 cm、所蔵:グレンストーン美術館(米国メリーランド州ポトマック)、撮影:Ron Amstutz © The Easton Foundation/Licensed by JASPAR, Tokyo, and VAGA at Artists Rights Society (ARS), New York

6. ルイーズ・ブルジョワ《雲と洞窟》、1982-1989 年、金属、木、274.3×553.7×182.9 cm、撮影:Christopher Burke © The Easton Foundation/Licensed by JASPAR, Tokyo, and VAGA at Artists Rights Society (ARS), New York


本展では、ブルジョワの98年間の人生とアーティストとしての70年のキャリアを約10メートルの年表で紹介するほか、精神分析の記録や展覧会のチラシなどのアーカイブ資料も展示されます。また、ブルジョワが愛用していたゲランのフレグランス「シャリマー」の香水瓶も展示され、その場で香りを体験することができます。

展覧会に関連して、キュレータートークやおやこでアート、スクールプログラム、アクセスプログラムなど、さまざまな企画も予定されています。また、俳優の二階堂ふみさんをナビゲーターとする音声ガイドも用意されており、作品の解説や見どころを聴くことができます。


自らを「サバイバー」と考え、芸術によって様々な苦難を克服してきたルイーズ・ブルジョワ。その作品群は、時に「地獄」のような苦しみを克服するヒントを私たちに与えてくれることでしょう。現代を生きる私たちにとって、示唆に富む展覧会となりそうです。

 

ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ


会期:2024年9月25日(水)-2025年1月19日(日)


会場:森美術館(東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー53階)


開館時間:10:00-22:00(火曜日のみ17:00まで)

     *入館は閉館時間の30分前まで


休館日:9月27日・28日、10月23日、12月24日、12月31日


公式ウェブサイト:www.mori.art.museum

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