top of page
Gen de Art

仏教美術を世界へ、より多くの人たちへ「ロンドンギャラリー」が見据える未来田島充さん・田島整さん

いにしえより伝わる美の品々を令和の現代、そして未来へ。日本、中国、韓国など東洋の仏教美術を中心とした古美術を手掛ける「ロンドンギャラリー」には、半世紀にわたって古美術に携わってきた社長の田島充さんと、その後を継ぐオーナーで息子の田島整(ひとし)さんの思いがあふれています。東京都港区の白金と六本木の二つのギャラリーから、「美しい物」を「つなげる」仕事への情熱と誇りは、父から息子へと継がれる信念は、今、世界へと広がろうとしています。


田島充さん・田島整さん London gallery
田島充さん・田島整さん

祖父から父、父から息子へ

美しいと思えるものだけを

東京都港区白金の閑静な住宅街の一角。たたずむ白亜の壁のビルの2階にある「ロンドンギャラリー」のスタートは、整さんの祖父の代にさかのぼります。福井県出身の充さんの父外雄さんは、医師としての仕事の傍ら、古美術を趣味とし、充さんもよく催しなどに連れて行かれていました。充さんは上京した後、ギャラリーを開設、整さんに継がれます。祖父から父、父から息子へと。言わば3代のDNAがギャラリーの柱を成しています。


白金と六本木の二つのギャラリーでは、テーマを決めた企画展、常設展を開いていますが、古美術、現代美術という分け方はあまりせず、先人の悠久の作品に現代美術の若手作家を絡めて展示することも。

作品を選び、展示する際の基準はいたってシンプル。「好きな物、置いていて楽しい物しか扱いたくない」「好きな物しかやらん」ということ。そこには、親子2代の半世紀の経験へのプライドに加え、確固たる信条、ポリシーがあります。そして、その作品の価値、美しさを見極める感性、言わば心の目こそが「ロンドンギャラリー」の真骨頂なのです。


ロンドンギャラリー London Gallery
ロンドンギャラリー

異空間の和のギャラリー

悠久の世界へのいざない

充さんと旧知の仲の写真家、杉本博司さんが手掛けたギャラリーは、一歩足を踏み入れるとそこは都心であることを感じさせない異空間のよう。東京とニューヨークを拠点に活動する杉本さん自身、古美術、骨董の愛好家。欧米のコレクターの家を思わせる和の雰囲気を醸し出した空間が、作品の魅力、個性を巧みに引き出します。


ほの暗く照明を落としたギャラリーの室内に置かれる物言わぬ作品は、静かにしかし、確かに語りかけてくれます。平安時代に作られた仏像をはじめとする10点ほどの作品は、その多くは大柄ではなく小ぶり。しかし、それが見る者の心の中で無限に広がり、悠久の世界へといざなってくれるのです。


「古いから、ただ歴史的価値があるから扱いたい、ということではない」と整さん。歴史的に価値のある物でも、美しくない物、見てくれが良くない物も少なくありません。美術品として近くに置いておきたい物。あたかも天は二物を与えず、という言葉に逆らったかのような歴史的価値と美術品としての美しさを併せ持った作品。それがここには存在します。


仏像も信仰の対象と言うより、言わば美の対象とでも言うべき姿かたちを見せ、時空を超えた作り手の思いを、先人が抱いた美への思いを、物言わずも静かにそっと語りかけてくれます。

歴史のある作品だと好き嫌いを言いづらい、ということをおもんぱかり、また「まずは作品を見ていただきたい」という思いから、作品の前にキャプション(説明)を置かないのもギャラリーの特徴。興味を持ってくれた来館者には、個別に作品について説明しています。


世界へ誇れる日本の古美術

次代へつなげる仕事の誇り

6代、7代と伝承されていることも少なくない日本の伝統文化の世界。その中にあって、2代というのは若手とも言えますが、古美術の継承、紹介への熱情は古くからの担い手に勝るとも劣りません。


彫刻や石、韓国の作品など、テーマを決めて展示。また、第4代目へと襲名されている竹工芸家、田辺竹雲斎の初代作の花かごに気鋭のアーティスト、須田悦弘さんの一輪の花(木彫)を添えた作品を置くなど、若手現代作家とのコラボレーションにも積極的に取り組んでいます。


仏教美術をはじめとした日本の古美術の世界的評価を高めたいという思いも誰より強く持ちます。何十億円、何百億円もの金額が付くことも少なくない世界の古美術品のマーケットにあって、日本の古美術品は、千年の歴史を持つ作品でも安くで取り引きされることが多く、その理由は何より世界の人たちによく知られていないからのようです。


欧米の饒舌とは異なる日本の寡黙。悠久の歴史の中にたたずむ凝縮された美の結晶。誇れる文化をあまねく世界の人たちへ伝える。「もっと世界の人たちに知ってほしい。日本の美術品は世界に誇れます。世界でも十分通用します」と整さん。


また、一方で、悲しいかな日本人自体が日本の、自国の古美術にそう詳しくはありません。海外で評価され、国内で再評価された伊藤若冲の例もあります。父充さんから整さんへ伝えられた「いいものをたくさん見ろ」という教え、代々伝えられてきたものを大切にし「つなげる仕事」への誇り。「父が作ってくれた『ロンドンギャラリー』の線路を守りながら、もっともっと多くの人に古いものを知っていただきたい」。世界へ、そして日本国内へ。尽きせぬ思いは、ギャラリーに置かれた作品とともに、静かに強く次代へ、その先の進化へ向かっています。

Comments


bottom of page