10月23日、国内外から数多くのゲストを日比谷のレッドカーペットに迎え、第36回東京国際映画祭が華々しく開幕。2007年より16年間、アジア部門のプログラミング・ディレクターを務めている石坂健治氏に、今年度の参加作品の傾向や新しい才能について伺いました。
東京国際映画祭 アジア部門のプログラミング・ディレクター 石坂健治氏
Gen de Art:今年の映画祭におけるテーマや見どころは何でしょうか?
石坂健治氏:全体としては国際交流の第一歩が大きなテーマです。今年は新たに「東京から映画の可能性を発信し、多様な世界との交流に貢献する」という基本理念を策定しています。数年間コロナ禍で苦しみましたが、世界中の人が東京に10日間集まり、皆で映画を観て語り合うという事がようやくできる様になりました。担当している「アジアの未来」部門において痛感しているのは、女性を主人公にした作品の方が面白いという事。その多くが社会に対して戦っている女性を描いているので、今世界でどの様な事が問題になっているかが良くわかります。
Gen de Art:現在のアジア映画の傾向についてどのように考えていますか?
石坂健治氏:アジアと一口に言っても国や地域によって違います。コロナ禍のダメージからいかに回復・復活するかが共通する大きな課題です。そしてアジア映画に限らないのですが、女性の置かれた立場を描き、物語の中心となる作品が多くなりましたし、女性の監督も増えています。また、現在の世界情勢を反映し、戦争や難民・移民を描いた作品が多いのも特徴です。
Gen de Art:映画祭の成功のための重要な要素は何だと思われますか?
石坂健治氏:もちろん、お客様が沢山来て下さるという事も一つの要素ですが、映画祭の性格やキャラクター、カラーがはっきりとしている事や、世界的に支持されている事が非常に重要です。ヨーロッパの大きな映画祭の後を追うのではなく、アジアの映画をしっかりと紹介する事、アジア重視である事を打ち出して行く姿勢が大切だと考えています。
Gen de Art:新たな才能の発掘について、どの様に取り組まれていますか?
石坂健治氏:11年前に「アジアの未来」部門を作りました。これは長編3本までの新鋭監督の作品が対象で、数百本の中から10本を選出するもう一つのコンペ部門です。新人の発掘を目的に永続して取り組んでいます。また、アジアで映画を勉強している学生達を集めた「アジア映画学生交流プログラム(Asian Film Student Exchange Program)」も始めています。今年は是枝裕和監督によるレクチャーを開催する事ができ、一つのステップとなりました。このプログラムは新しい才能を育てる事でもあり、アジア映画を重視する事にも繋がるので、来年以降ももっと大きく広げて行きたいと考えています。
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