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異文化間の対話、持続可能性、そしてデジタルアート アート・バーゼル香港がコロナ禍以前の規模へ

「現代アートは、私たちが等しく表現し、伝達し、アイデアを交換できる、今日の世界における普遍的な言語です」と、3月にアジアで開催される豪華なアートフェアの復活についてアート・バーゼル香港のディレクターであるアンジェル・シヤン=ルー氏(Angelle Siyang-Le)は言います。今年のアート・バーゼル香港は3月28日から30日まで開催され、地域および世界中の200以上のギャラリーから集められた現代アート作品が展示されます。

 

インタビューの中でアンジェル氏は、パンデミック以降の現代アートの発展の軌跡、そして芸術的展示における公共空間の役割について語り、最も重要なこととして、今年アジアで最も壮大なアートフェアとなるアート・バーゼル香港の見どころについて教えてくれました。



Angelle Siyang-Le, the director of Art Basel Hong Kong
Angelle Siyang-Le, the director of Art Basel Hong Kong

2024年のアート・バーゼル香港が近づいていますが、参加者が期待できる今年の見どころを教えてください。

2024年は、パンデミック以来、アジアが世界の他の地域と再び繋がる年になると感じています。今年は、アジアが完全に再開した最初の年、つまりアート・バーゼルが本格的な規模で復活した最初の年でもあります。今回は243のギャラリーが参加する予定なので、以前の規模に戻ったと言えますが、実際にはさらに多くのギャラリーが参加すると思います。

 

今年は、大規模な作品に特化したキュレーション部門「エンカウンターズ(Encounters)」も最大級の規模で設置されています。そこでは16点の作品が展示され、うち11作品はアート・バーゼル香港のために特別に制作されたプレミア作品です。 

 

また、アート・バーゼル香港で初めて設置されるキュレーションやテーマ別のプレゼンテーションに特化した「カビネット(独Kabinett英Cabinet)」部門も、史上最大規模で行われます。「カビネット」では、アジアの歴史と現代における個展に重点を置き、33のプロジェクトが展示されることになっており、「カビネット」に応募したギャラリーは、ブースの中に各々のブースを設置し、そのギャラリーが今年推進しているプロジェクトを紹介するというユニークなブースシステムを採用します。

 

また、今年は日本から26のギャラリーが参加し、その数は全体の10%を占めます。その中には、アート・バーゼル香港に初めて参加するギャラリーも2つ含まれています。比田井南谷氏をはじめとした日本の著名な書道家を紹介する√K Contemporary(ルートKコンテンポラリー)、そして、WAITING ROOMという新進気鋭の若いギャラリーです。このギャラリーは、日本からの有望な新星の一つだと感じています。




今回の展覧会で重要なテーマは何でしょうか?

今回は、パンデミックの影響で生じた数々の疑問に、もう一度向き合う新しい機会であると思っています。あの時期は、人々の考え方が大きく変化した時でもありましたが、今、私たちは新しい物の見方でニューノーマルを生きています。今年、ギャラリーが一堂に会し、会場に並べられた作品を目にすることで、そのことを実感できるでしょう。

 

もう一つ新しいことは、従来のアートセンターだけでなく、アートを街に持ち込み、市民と深く関わり合おうと試みていることです。そこで、今回も国際的に高く評価されている中国人アーティスト、楊福東(Yang Fudong)の作品を共同委嘱しているM+と再びコラボレーションすることにしました。M+が設置するファザードに投影するため、1970年代から1990年代の香港スタイルのフィルムを伝統的なモノクロ映像で撮影することも楽しみな仕事のひとつです。このフィルムはフェアの期間中、繰り返し再生され、港の向こう側、さらにはビクトリア・ピークからも、ファザードに投影される作品を見ることができます。このように、パブリック・アートの要素を街の景観に取り入れることで、本アートフェアの期間中、人々がアートの旅に乗り出せるような試みを行います。

 

今日のアートシーンにおいて、デジタルアートは非常に重要な役割を果たしています。アート・バーゼル香港で、デジタルアートはどのような形で参加しているのでしょうか?

2024年、デジタルの意味は拡大しています。コロナ禍を通じて、私たちはデジタルアートの領域、NFT(Non-Fungible Token: 代替不可能なトークン=アートや音楽等のデジタルデータと所有者をブロックチェーン技術で紐づけ、所有権を購入できる仕組み)、AIが生成したあらゆる種類のアート作品について多くを学んできました。アートの世界において、デジタルアートが非常に重要なメディアの一つになっていることは疑いようもありません。今後もデジタルアートがなくなることはないでしょう。

 

しかし、私たちは、このデジタル時代においても、対面での関わりや繋がりが消えることはないと感じています。なぜなら、人々は今でもデジタルアートを直接鑑賞したいと思っているからです。彼らは、実際に展覧会やフェアに足を運び、デジタル作品を目にし、アートの影響を物理的に体験することを望んでいます。

 

アートの世界においても、持続可能性は切実な問題です。アート・バーゼル香港がこの課題に関与するために実施している取り組みや実践はありますか?

アート・バーゼルでは、私たち自身のチーム、サプライヤー、ベンダー、そして参加者に対し、より環境に配慮するよう働きかけています。同時に、アート・バーゼルはグローバル・ブランドとして、長期的な持続可能プロジェクトに投資し、様々な取り組みを行っています。例えば今年は、昨年のアート・バーゼル・マイアミ・ビーチで発表された海洋環境保護団体Parley for the Oceans(パーレイ・フォー・ジ・オーシャンズ)とのコラボレーションを展開するつもりです。アート界内外とのコラボレーションを促進するParleyは、アーティストやギャラリーと協力して、海の美しさとその脆さへの認識を高め、その破壊を終わらせようとしています。 

 

アジアのアート市場は大きな成長を遂げ、各地で新しいアートフェアが誕生しています。このような競争の中で、アート・バーゼル香港はどのように差別化を図っているのでしょうか?

欧州や米国で、国際的なアートフェアが複数開催されていることを鑑みると、アジアで質の高いアートフェアの数が増えていることは、地域にとって良い兆候だと言えます。アジアで国際的なアートフェアの開催が増えることは、アジアの現代アートシーンが成長し続けていることを意味すると感じています。ですから、そのことは、現代アートやコンテンポラリーアートの認知度を高め続けようとする私たちを、勇気づけることにもなるのです。


Art Basel in Hong Kong 2024_Encounters Haegue Yang, The Randing Intermediates – Earth Alienage Rising Sporing, 2020 Courtesy of the artist and Kukje Gallery, Seoul; kurimanzutto, Mexico City / New York Photo by At Maculangan/Pioneer Studios

Art Basel in Hong Kong 2024_Encounters Atsushi Kaga, Ukiyo-e, 2024 Acrylic and imitation gold leaf on linen in 5 panels, timber, tatami mat, electrified paper lanterns , 400 x 570 x 186 cm Courtesy the artist and mother’s tankstation Dublin | London Credit: Masaomi Morizono, Eugene Langan


 

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