8月8日、パレスホテル東京で「HERALBONY Art Prize 2024」授賞式が開催されました。この国際アートアワードは、障害のあるアーティストたちの才能を世界に発信する舞台として、株式会社ヘラルボニーが初めて主催したものです。
グランプリに輝いた「ヒョウカ」
1,973点もの応募作品の中から、グランプリに選ばれたのは仙台市在住の浅野春香氏による作品「ヒョウカ」。浅野氏は20歳で統合失調症を発症し、入退院を繰り返しながらも29歳から本格的に絵を描き始めました。
受賞作「ヒョウカ」は、満月の夜の珊瑚の産卵をテーマに、切り開いた米袋に緻密に描かれています。満点の星空や宇宙、満月などのモチーフが織りなす世界は、見る者を魅了します。また、作品名には「社会で評価されたい」という作者の強い思いが込められており、それは障害のある方々の「ピュア」なイメージを超えた、普遍的な人間の欲求を表現しています。浅野氏は以前、この欲求を「恥ずかしいこと」だと思っていましたが、ある人から「それもあなたの素直な気持ちの表れ」と言われたことをきっかけに、ありのままの気持ちを表現して良いのだと気づいたと言います。
興味深いのは、作品に込められた個人的な物語です。母親の胎内にいた頃の情景や、珊瑚の研究者である父親のことなど、浅野氏にとって大切な存在である両親からインスピレーションを受けています。この個人的な経験と普遍的なテーマの融合が、作品に深みと説得力を与えているのです。ヘラルボニーのCo-CEOである松田崇弥氏は、「評価されたい、自立したいという思いは、一人一人が持つ権利です。この賞が浅野さんにとって誇りとなるよう、私たちも努力して参ります」とコメントしました。
グランプリ受賞者には、創作活動を奨励する資金として300万円の賞金が贈られます。さらに、ヘラルボニーと作家契約を締結し、今後さまざまなライセンス起用により国内外にその異彩を発信していく機会が提供されます。
世界28カ国から集まった異彩
今回のアワードには、世界28カ国から924名のアーティストが参加。グランプリ以外にも、7つの企業賞と4つの審査員特別賞が選出されました。特筆すべきは、海外からの参加者の活躍です。イギリスのフラン・ダンカン氏が丸井グループ賞を受賞し、ニュージーランドのスーザン・テカフランギ・キング氏とアメリカのエス・プロスキー氏が審査員特別賞に輝きました。
企業賞はゴールドスポンサー7社による賞で、受賞作品はそれぞれの企業のサービス・プロダクト・事業のいずれかへの起用が予定されています。これは、アーティストたちに実際のビジネスの場での活躍機会を提供するという、ヘラルボニーの理念を体現するものです。
審査員の黒澤浩美氏は、「様々な文化や歴史、異なる背景を持つ一人ひとりのストーリーを丁寧に見る度に、世界はとても広く美しいのだと実感しました」と総評。さらに「アートの世界ではいかに他の人と違うかが重要ですが、それこそヘラルボニーのミッション『異彩を、放て』そのものだと感じました」と、このアワードの意義を強調しました。
異彩の世界を体感する「HERALBONY Art Prize 2024 Exhibition」
8月10日から9月22日まで、東京・大手町のSMBCアース・ガーデンにて「HERALBONY Art Prize 2024 Exhibition」が開催されます。ここでは、厳選された62作品が一堂に会し、グランプリ作品を含む受賞作品を直接鑑賞することができます。国内最大級のギャラリーで行われるこの展覧会は、障害のあるアーティストたちの才能を広く社会に紹介する貴重な機会となります。来場者は、従来の「障害とアート」のイメージを覆す、新鮮で力強い表現に出会えるでしょう。
HERALBONY Art Prize 2024 Exhibition
会期:2024 年 8 月 10 日(土)〜 9 月 22 日(日)
時間:10:00~18:00
料金:入場無料
会場:三井住友銀行東館 1F アース・ガーデン(東京都千代田区丸の内 1-3-2)
主催:株式会社ヘラルボニー
写真の提供:株式会社ヘラルボニー
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