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Gen de Art

奈良美智初のドイツ大規模個展がフリーダー・ブルダ美術館で開幕

ドイツの美術史に新たな1ページを刻む展覧会「YOSHITOMO NARA」が、11月23日よりドイツのバーデン・バーデンに位置するフリーダー・ブルダ美術館で開幕しました。本展は、国際的に高い評価を受ける日本人アーティスト、奈良美智氏の初となるドイツでの大規模個展です。展覧会は来年4月27日まで開催され、絵画、ドローイング、彫刻、インスタレーションを通じて、奈良氏の40年に及ぶ芸術的旅路 が紹介されます。


Yoshitomo Nara in front of Harmless Kitty (Detail), 1994 in the Museum Frieder Burda. The National Museum of Modern Art, Tokio © Yoshitomo Nara, courtesy Yoshitomo Nara Foundation; photo: Nikolay Kazakov

Yoshitomo Nara in front of Harmless Kitty (Detail), 1994 in the Museum Frieder Burda. The National Museum of Modern Art, Tokio © Yoshitomo Nara, courtesy Yoshitomo Nara Foundation; photo: Nikolay Kazakov


1959年生まれの奈良氏は、同世代で最も称賛される芸術家の一人として確固たる地位を築いています。特に、魅惑的で対峙するような眼差しを特徴とする大型ポートレート作品「Angry Girl」シリーズは、現代絵画の代表作として広く知られています。しかし、これは奈良氏の多面的な芸術表現の一側面に過ぎません。


本展覧会では、奈良氏の内面世界を深く覗き込むことができます。作品群は、日本での孤独な幼少期からドイツでの留学時代における孤立まで、彼の人生の様々な章を映し出しています。アンダーグラウンド・ロック、フォーク、パンク音楽の影響、そして文学、映画、自然への情熱が作品全体を通じて織り込まれ、日本とヨーロッパの芸術伝統を橋渡しする独自の芸術的語彙を生み出しています。


奈良氏の芸術的発展は、特に幼少期の経験に深く根ざしています。共働きの両親と年の離れた兄弟のもと、多くの時間を一人で過ごした彼は、絵を描くことと音楽に慰めを見出しました。ベトナム戦争中に米軍向けに放送されていたFEN(Far East Network:極東放送網)は、彼にとって世界への窓となり、ボブ・ディランなどの影響力のあるアーティストや、フォーク音楽を通じた反戦メッセージに触れる機会となりました。これらは、言葉の壁を超えて彼の感性に深く刻み込まれ、後の作品世界の重要な要素となっています。


Yoshitomo Nara, Sleepless Night (Sitting), 1997. Courtesy of Rubell Museum, Miami & Washington, D.C. © Yoshitomo Nara, courtesy Yoshitomo Nara Foundation

Yoshitomo Nara, Sleepless Night (Sitting), 1997. Courtesy of Rubell Museum, Miami & Washington, D.C. © Yoshitomo Nara, courtesy Yoshitomo Nara Foundation


Yoshitomo Nara, Missing in Action, 1999. Courtesy of Sally and Ralph Tawil © Yoshitomo Nara, courtesy Yoshitomo Nara Foundation

Yoshitomo Nara, Missing in Action, 1999. Courtesy of Sally and Ralph Tawil © Yoshitomo Nara, courtesy Yoshitomo Nara Foundation


日本のポップカルチャーに広く浸透する「かわいらしさ」とは一線を画し、奈良氏は作品を通してより深い感情の機微を描き出しています。代表的な「Angry Girl」のシリーズでは、無邪気さや愛らしさとは無縁の、反抗心を秘めた少女たちの姿が描かれています。これらの作品の背景には、第二次世界大戦における日本の歴史を見つめ直してきた奈良氏の平和への思いと社会への深い洞察が込められています。


アーティストの政治的意識は、歴史的な省察を超えて広がっています。2002年にアフガニスタンを訪れ、戦争の様子をドローイングと写真で記録して以来、奈良氏の作品は現代の政治的問題により深く関わるようになりました。特に2011年の福島第一原発事故は彼の芸術的方向性に影響を与え、反核運動や環境保護活動への支持につながっています。彼の力強いイメージは、政治的デモでも見られるようになり、その明確なメッセージは世界中の活動家たちの共感を呼んでいます。


奈良氏の表現の深まりは、その教育的背景と切り離せません。愛知県での美術教育を経て、1980年に渡欧した奈良氏は、ヨーロッパのモダニズムやルネサンス期の芸術に触れます。この出会いは、後の作品の構図や技法に大きな影響を与えることとなりました。デュッセルドルフ美術アカデミーでA.R.ペンク氏に師事した時期は、奈良氏の作風に大きな転機をもたらしました。大きな頭部と印象的な目を持つ子どもたちの姿は、見る者の心に直接響く奈良氏独自の表現として、この時期に確立されたものです。


  1. Yoshitomo Nara, My Drawing Room 2008, Bedroom Included, 2008. Collection of the Artist, Ausstellung Museum Frieder Burda, Baden-Baden 2024 © Yoshitomo Nara, courtesy Yoshitomo Nara Foundation; photo: Nikolay Kazakov

  2. Yoshitomo Nara, Midnight Tears, 2023. Collection of the Artist, Ausstellung Museum Frieder Burda, Baden-Baden 2024 © Yoshitomo Nara, courtesy Yoshitomo Nara Foundation; photo: Nikolay Kazakov

  3. Yoshitomo Nara, exhibition at Museum Frieder Burda, Baden-Baden 2024 © Yoshitomo Nara, courtesy Yoshitomo Nara Foundation; photo: Nikolay Kazakov


スペインのビルバオ・グッゲンハイム美術館、ドイツのフリーダー・ブルダ美術館、ロンドンのヘイワード・ギャラリーとの協力で開催される本展では、メキシコシティのジュメックス美術館や韓国・ソウルのリウム美術館などの著名な機関からの傑作に加え、普段は一般公開されることの少ない個人コレクションからの作品も展示されます。この包括的な回顧展は、奈良氏の芸術的成果を祝福するとともに、彼の芸術的視野の形成に重要な役割を果たしたドイツへの意義深い帰還を象徴するものとなっています。

 

YOSHITOMO NARA


会期: 2024年11月23日 - 2025年4月27日


場所: フリーダー・ブルダ美術館

   (Lichtentaler Allee 8b, 76530 Baden-Baden)


開館時間: 火曜日–日曜日 10:00 - 18:00


閉館日:12月24日、31日



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