世界三大映画祭の一つ、ベルリン国際映画祭が2月13日(水)、記念すべき第75回目の幕開けを迎えます。今年は19作品がコンペティション部門で金熊賞を競うほか、新設されたパースペクティブ部門や特別上映を含む全11部門で約250作品が上映されます。1951年の創設以来、芸術性と商業性を兼ね備えた作品を世界に発信し続けてきた本映画祭。新芸術監督トリシア・タトル氏を迎え、従来の枠組みを超えた意欲的なプログラミングで、世界最大規模の公開映画祭としての存在感を示します。オープニングを飾るのは、『ラン・ローラ・ラン』のトム・ティクヴァ監督による最新作『The Light』。開会式では、英国を代表する女優ティルダ・スウィントンへの名誉金熊賞授賞式も執り行われ、創設75周年にふさわしい華やかな幕開けとなります。

第75回ベルリン国際映画祭にて名誉金熊賞を受賞するティルダ・スウィントン
コンペティション部門では、待望の新作が続々とワールドプレミアを迎えます。『6才のボクが、大人になるまで。』で知られるリチャード・リンクレイター監督が、『Blue Moon』で8年ぶりにベルリナーレに帰還。20世紀を代表する作曲家デュオ、ロジャース&ハートの一人、ロレンツ・ハートの最期の日々を描く本作では、イーサン・ホーク、アンドリュー・スコット、マーガレット・クアリーという実力派キャストが集結し、すでに大きな話題を呼んでいます。
フランス映画の躍進も今年の特筆すべき傾向の一つです。アカデミー賞女優マリオン・コティヤールが主演を務める幻想的な物語『The Ice Tower』をはじめ、5作品がコンペティション部門にノミネート。また、2021年に衝撃的な作品『Bad Luck Banging or Loony Porn』で金熊賞を受賞したルーマニアのラドゥ・ジューデ監督が、新作『Kontinental '25』で住宅危機とナショナリズムの台頭という現代社会の諸問題に挑みます。

『ブルームーン(Blue Moon)』© Sabrina Lantos / Sony Pictures Classics

『ミッキー17』(2025)© 2025 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
特別上映部門では、『パラサイト 半地下の家族』でアカデミー賞を受賞したポン・ジュノ監督が、ロバート・パティンソン主演のSF大作『ミッキー17』を引っ提げて参加。また、新設されたパースペクティブ部門では、14の新鋭による初長編作品が上映され、次世代の映画作家たちの新たな表現に注目が集まっています。
日本からの参加作品も多彩な顔ぶれを見せています。世界的巨匠・増村保造監督の『清作の妻』が名作として「ベルリナーレ・クラシックス」部門で上映されるほか、若手からベテランまで、計6作品が各部門に選出されました。注目は「ジェネレーション Kplus」部門の『海辺へ行く道』(横浜聡子監督)。麻生久美子、高良健吾ら実力派キャストが集結し、世界初披露となります。また「パノラマ」部門では藤原稔三監督の『ミックスモダン』が、「フォーラム」部門では小田香監督の『アンダーグラウンド』が選出。短編部門でも水尻自子監督の『普通の生活』と泉原昭人監督の『ウィータ・ラカーマヤ』が上映され、新世代の映画作家たちの意欲的な表現に期待が集まります。
『清作の妻』(1965)
Photo description: Ayako Wakao © KADOKAWA CORPORATION 1965
『海辺へ行く道』(2025)
Photo description: Konosuke Harada © Eri Okamoto
『ミックスモダン』(2025)
Photo description: Rino Tsuneishi, Daiki Ido © Toshizo Produce
『アンダーグラウンド』(2024)
© 2024 trixta
『普通の生活』(2025)
© Miyu Productions & New Deer
『ウィータ・ラカーマヤ』(2016)
© Studio Mangosteen
今年の審査委員長を務めるのは、『キャロル』や『ゴールド/金塊の行方』で知られる巨匠トッド・ヘインズ監督。コンペティション部門19作品のうち、8作品が女性監督による作品となり、ジェンダー平等の面でもカンヌ、ベネチアを大きく上回る革新性を示しています。さらに、ウクライナのカテリーナ・ゴルノスタイ監督によるドキュメンタリー『Timestamp』が戦時下の教育者たちの姿を克明に記録するなど、現代社会が直面する課題にも正面から向き合う作品が並びます。
開会式には、『オッペンハイマー』で話題のキリアン・マーフィー、ティモシー・シャラメ、ジェシカ・チャステイン、ジェイコブ・エロルディ、ベネディクト・カンバーバッチをはじめ、世界中のスター俳優や著名監督が集結。創設75周年を華やかに彩ります。映画祭は2月23日まで11日間にわたって開催され、ベルリン市内の各会場で上映されます。芸術性の高い作品と商業性を兼ね備えた、世界最大規模の公開映画祭として、今年も世界中の映画ファンの注目を集めています。
第75回ベルリン国際映画祭
会期:2025年2月13日(水)〜23日(日)
会場:ベルリナーレ・パレス(メイン会場)
ベルリン国立歌劇場
フリードリヒシュタット・パラスト
ツォー・パラスト
他市内各所