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Gen de Art

動物から人へ、そして新たなる創造へー一 土屋仁応個展「動物と人」

5月17日より、彫刻家・土屋仁応氏の新作展「動物と人」が銀座のメグミオギタギャラリーにてスタートしました。今回は動物像に加え人物像を取り入れ、「人間とは何か」という根源的な問いを投げかけます。他者とのつながりが希薄な現代社会に対する彫刻による問題提起であり、自然と文明の調和を追求します。変容する人間性の本質に肉薄し、新たな地平を切り開く土屋氏にはどのような制作背景があるのでしょうか。



Gen de Art:展覧会のタイトル「動物と人」には、どのようなコンセプトや思いが込められていますか?

土屋仁応:これまでは動物像をたくさん制作してきました。動物は、例えば麒麟は平和を、獅子は力強さなど、なにかを象徴するものとしての動物像です。今回は以前から関心があった人間のモチーフとの組み合わせをテーマにしました。動物の部分が自然の力や無意識を表し、人物の部分が文明や意識を表し、それらの調和をひとつの作品にしたいと思いました。長年動物像を作ってきた自分自身を振り返り、これからは人物像も取り入れていこうと思ったことから、タイトルを「動物と人」にしました。ある意味、自分の新しい方向性を示す作品展です。


Gen de Art:今回初めて人物像を取り入れた理由や狙いは何だったのでしょうか。動物像との組み合わせによって生まれる新たな表現効果についてお聞かせください。

土屋仁応:きっかけは昨年絵本を制作したことでした。(「メテオ詩人が育てた動物(いきもの)の話」 文/志村ふくみ 絵/土屋仁応 2023年 求龍堂)登場人物たちの姿形を想像するなかで、当たり前だけれど、人の心を形にするには人の形が一番適していると感じました。また、動物像と人物像を組み合わせることによって、新しい関係性が生まれると思います。例えば人物が動物に乗っかっている作品では、互いの信頼関係を表現しています。支え合えば、一人ではできないことが可能になる。そういう思いを表現できればと考えています。


土屋仁応 / Yoshimasa Tsuchiya、穿山甲 / Pangolin、2024、32.5 x 57 x 14 cm、Painted camphor wood, labradorite (pangolin eyes), crystal (human eyes)


土屋仁応

土屋仁応 / Yoshimasa Tsuchiya、人魚 / Mermaid/Merman、2024、123 x 43 x 23 cm

Painted camphor wood, borosilicate glass (eyes and object in hand by Fukuo Tanaka), acrylic support, Photo: Yukihiro Sugimori


Gen de Art:作品制作で特に心がけている点や、独自の技法(彩色法や玉眼の取り入れ方など)についてお話しいただけますか。

土屋仁応:木彫の作品にガラスや水晶の目玉を入れているのが一つの特徴ですね。そのガラス部分は、今回同時開催しているガラス作家の田中福男さんの影響を受けて制作しました。田中さんが最近、枝分かれした花のようなガラス作品を制作し始めたので、自分の作品の一部としても使わせてもらおうと思ったんです。彼とはプライベートでも交流があり、お互いに新しいことにチャレンジしようという話になりました。


Gen de Art:作品を制作する上で、インスピレーションとなる源泉は何ですか?発想の着想点を教えてください。

土屋仁応:一番の源泉は制作そのものです。作品を仕上げた時点で、次にこういう技法を試したいとか、作品のこの部分を次はもっと強調してみようかなど、次のヒントが生まれます。そういう風に制作自体が次の制作に影響を与えている部分は大きいと思います。

それに加えて、バラ栽培が趣味なのですが、植物の色や形の変化からもヒントを得ています。バラは掛け合わせて新種を生み出しますが、それと同じように自分の過去の作品をブレンドしたり、突然変異的に新しいものが生まれてきます。生物の成長と変化を作品に取り入れようと想像するのが発想の原点と言えると思います。


Gen de Art :今回の新作発表を経て、今後どのような彫刻表現にチャレンジしていきたいですか。目指す目標や抱負などをお聞かせください。

土屋仁応:今回は動物像と人物像を組み合わせましたが、さらに複雑な構造の作品にチャレンジしてみたいですね。これまでは小さめの作品が多かったので、大作に取り組んでみたい気持ちもあります。また、昔から仏像を見るのが好きなのですが、仏像を拝観すると、心の中で語りかけると答えが返ってくるように感じます。そういう作品を作り出せたら良いなと思っています。




土屋仁応

東京芸術大学で彫刻を学び、大学院では仏像の修理や技法を研究。当時の研究課題は平安時代の「普賢菩薩騎象像」「文殊菩薩騎獅象」の台座の獅子と象。威厳ある獣座の動物たちに、強さや慈悲深さなど、それぞれ象徴的意味があることを実感。大学院を修了後、象徴的な動物像をテーマに作品を発表。モチーフは草食動物から始まり、肉食動物、幻獣と年々広がり、一昨年「進化論」と題した作品集を上梓。その後、絵本「メテオ」の制作をきっかけに人物と動物とが何らかの関係で結ばれているイメージが思い浮かび「動物と人」をテーマに個展を開催。

 

土屋仁応個展「動物と人」


会期:2024年5月17日(金)-6月8日(土)

会場:メグミオギタギャラリー

(〒104-0061 東京都中央区銀座2-16-12銀座大塚ビルB1)

開館時間:12:00-18:00

休廊日:日曜・月曜

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